· 

「歪曲」「抹消」「一般化」

 

ネコは暗がりでも、はっきりと見ることができます。

でも色は見えません。

ヘビは赤外線を見ることができます。

ハエは複眼を持つので、複数の風景を同時に見ています。

 

どの世界も本人にとっては「真実」ですが

ありのままの姿をみているのは、どの動物でしょうか?

 

人の目も近視や乱視で視界がぼやけてしまいますし

鳥のような視力も持っていません。

 

今回は人が外側の情報を受け取ったとき

自動的におこなっている処理について紹介します。

 

 

人の情報処理能力

 

人が一度に認識できる情報の数は、片手で数えられる程度です。

複数の仕事を同時進行しているとき、頭が混乱して小さなミスをやってしまったなんて経験があるのではないでしょうか。

 

人の脳はマルチタスクには適していないと、研究によって証明されています。

パフォーマンスの高い取り組みをするなら、ある時間は一つのことに集中するほうがいいんですね。

 

とはいえ、外側の情報が遠慮して主張をやめるなんてことはありません。

ものすごい勢いで入ってこようとするわけです。

それらの情報を脳は、必要な情報と不必要な情報に自動的に割り振りをしているんですね。

それだけでなく、自分が持っている価値判断や信条によって

無意識のうちに「歪曲」「末梢」「一般化」されてしまっているのです。

 

 

歪曲

 

ある二人がお店に入ったとき、その店員さんの評価が真逆になったとします。

一人は「あまり愛想がいいように感じない」と思っていて、もう一人は「とても愛想がよかった」と思っています。

 

ではどうして、真逆の感じがしたのでしょう?

愛想がよかったと思った人は、その店員さんが仲良くしている親戚と似ていたかもしれません。

そのために、ちょっとした笑顔でも好印象を強く持てたのです。

 

一方で、愛想が悪いと感じた人は、その店員さんがいつも皮肉を言ってくる人に似ていたかもしれません。

そのため、店員さんの笑顔が皮肉を言っていたときの笑顔に見えてしまったのかもしれません。

 

このように、過去の出来事から連想した情報を目の前の出来事に重ね合わせてしまうことがあるのです。

その結果、店員さんの印象を歪曲してしまうのです。

 

 

抹消

 

このブログを読んでいるあなたは、あなた自身の呼吸を意識していましたか?

この一文を見た瞬間に、呼吸を意識してしまったかもしれませんね。

 

人の脳はつねに、何千ものことを知覚しています。

ですが意識を向けることができるのは、だいたいひとつです。

頑張っても、三つが限界でしょう。

 

この特性のメリットは、一つのことに集中できるということです。

関心を持ったものに意識を向けることで、他のことに気を取られなくなるんですね。

 

でも同時にデメリットもあります。

それは、認知した情報のほとんどが意識されることなく消されてしまっているんです。

とてもキレイな花が咲いていても、そのことに気づかずに通り過ぎてしまうのです。

 

 

一般化

 

休日に公園にいったとします。

公園ではフリスビーをしたり、バレーボールやバドミントンで遊んでいる人がいました。

その公園は大きな公園で、行く先、行く先で、アクティブな遊びをしている人に出会ったとします。

 

そうなると「この公園に来る人はアクティブな人だ」という印象が生まれます。

でも実際は、のんびりとベンチに座って読書を楽しむ人もいるし

近道だから公園を横切っている人もいます。

このように、同じ傾向のものをまとまった形で認知することで、ここはこういう場所だと結論づけるくせをもっているんですね。

 

一般化は予測を立てるのに不可欠ではありますが、十分な裏付けのない一般化は勘違いの原因にもなってしまうのです。

 

 

 

このように「歪曲」「抹消」「一般化」と呼ばれる、自動のフィルタリングがあります。

これらを知っておくことで、情報に正しく向き合いやすくなります。

脳には無意識で働くさまざまな機能があります。

それらは便利でもありますが、ときにデメリットを引き起こすことがあるので注意が必要なんですね。