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ネタバレ視聴を心理的に分析すると

 

若い人の間で「ネタバレ視聴」なるワードが生まれています。

これはまだ見ていない作品の結末までの粗筋を知ったうえで

作品を観るという楽しみ方です。

 

ストーリーの満足度を決定づける要素に

「カタルシス」というものがあります。

カタルシスは、ストーリーの全容が明らかになったり

強敵をあっと驚く手法で打倒したときなどに現れる

感情のほとばしりです。

 

ネタバレ視聴は、このカタルシスを自ら抹消させることです。

どうしてそんな視聴方法を選択するのか?

それを心理的側面から分析してみました。

 

 

若い世代が生きる世界

 

ネタバレ視聴を実践しているおおよその年齢は

1523歳となります。

どうしてこの世代だけが突出しているのか?

それを紐解くには、この世代が生きている世界を見る必要があります。

 

この世代は生まれた瞬間からインターネットが存在していました。

パソコンやスマホで調べれば、答えが一瞬ででてくる世界です。

つまり、答えを見つけるために悩むことが無い世代と言えます。

 

疑問が生まれればネットで調べる。

一瞬で求めている回答にたどりつくことができます。

つまり「分からない状態」の経験が圧倒的に少ないわけです。

 

 

「分からない」は不安を呼び覚ます

 

人は理解できないものに不安を感じるようにできています。

答えの分からない問題があると、それだけで不安を感じるのです。

ここがネタバレ視聴のキーであると考えます。

 

ストーリーはその性質上、不完全な情報の羅列といった形をとります。

ストーリーが進むことで、小さな情報が統合されて全体が浮かび上がる

そのような設計にどうしてもなってしまいます。

 

つまり、結末までの間は情報が不足しているため

視聴者は強制的に不安定な状態に押し込まれます。

 

ですが視聴者はラストで必ず全てが分かると知っているので

不安定を感じながらも、心のどこかで安心していられます。

 

しかし、若い世代は情報不足の不安を経験していません。

この不安感に耐える練習をしていないため

たとえフィクションであっても、不安を感じることが

ストレスになってしまう可能性が高いのです。

 

 

安心から抜け出せない症候群

 

少しの不安も持ちたくない。

つまり安心できる領域から抜け出せない心理状態といえます。

これは「すぐに答えがでる」ことが当たり前の世界で生まれ

生活してきたことで発生した、新しい病床かもしれません。

それを「安心から抜け出せない症候群」と名付けました。

 

別の言い方をすると、考えることの放棄とも言えます。

 

不足している情報から推察し予測し論理立てる。

その力の行使を放棄しているとも言えるのです。

 

ここから考えられるのは

不安耐性が極端に低い人が増える可能性があるということ。

 

もしくは、想定していた結果にならなかったときに

その結果を受け入れられない。

失敗を許容できない人が増える可能性があるということ。

 

 

レジリエンスの強化が必須の未来

 

以上のことから、心理的回復力(レジリエンス)を高める支援が

さらに重要性を増してくるでしょう。

専門家だけでなく、誰もがレジリエンス支援のできる社会。

そうならなければ、生産年齢人口がさらに低下し

日本の競争力はとんでもないことになるかもしれません。

 

この予言が外れることを願うばかりです。