生きていると不満に思うことは多いものです。
お腹が空いてるのに、混んでてなかなか食べられない
思ったような昇給にならない
早く行きたいのに渋滞で進まない
部下が思ったように動いてくれない
運動してるのになかなか体重が減らない
などなど
こちらが歓迎しているわけでもないのに、不満はそこかしこから出てきますよね。
人は生きているとどうしても不満に行き当たります。
でもどうして、不満に行き当たるのでしょうか?
実は不満は、脳の情報処理のメカニズムによって生み出されていたのです。
脳は推論する
脳は無意識で常に「こうに違いない」という仮説を立てています。
そして五感から入ってきた情報と脳が作り出した仮説との整合性を比べ、それが合致したときに脳は満足を得るようになっています。
このとき、外側の情報と、脳が作り出した仮説とのギャップが大きいと、脳は満足を得ることができずに不満状態になってしまうんです。
例えば、レジがなかなか進まないという状況は、不満が起きやすいですよね。
これは脳の中で「会計はすぐに終わる」という理想的な仮説を立てたにもかかわらず、それを満足させることができないことで、不満が生まれているんです。
ここでもしも脳が「会計は時間が掛かる」という仮説を立てていれば、レジが混雑していても脳が立てた仮説と外側の現実が合致しているため、脳は満足するので不満が生まれないんですね。
このように、脳が作り出した仮説と現実のギャップが大きければ大きいほど、強い不満が生まれるようになっているのです。
ギャップを埋める2つのアプローチ
さて、仮説と外側の現実にギャップがあると、不満が生まれるとお伝えしました。
人は不満の状態をそのままにしておくことが出来ない生き物でもあるんですね。
いま感じている不満をなんとかして解消したいと思い、脳は働き始めます。
このギャップを埋めるために、脳は2つのアプローチ取ります。
一つは、仮説を固定して、外側の現実が仮説に合致するように働きかけるというものです。
さっきの会計の例を使うと、会計を少しでも早く終わらせるために、空いてるレジを探すといった行動をとります。
何も行動をしないときよりも、いくぶんかギャップを埋めることができるので不満の大きさも和らげることができるのです。
もう一つの方法は、外側の現実を固定して、仮説を変えるといったアプローチになります。
これは「考え方を変える」ことで、ギャップを少なくする方法です。
前にお伝えした「会計は時間がかかる」といったような、考え方の変化がこのアプローチになります。
アプローチの方法で人生が決まる
イギリスの脳機能の研究者であるカール・フリストンは、行動によってギャップを埋めようとすることを「能動的推論」と呼びました。
ただ面白いことに、自分の考え方を変えてギャップを埋めることについては「受動的推論」という呼び方をしていないんですね。
ここでは便宜的に「能動」の対義語である「受動」を使って区別するようにします。
この「能動的推論」と「受動的推論」のどちらをより多く使うかで、人生は大きく変わってしまうんですね。
「能動的推論」を多く使う場合、自分の理想の仮説と外側の現実を合致させるために行動を起こします。
理想の仮説が建設的なものであれば、ギャップを埋める行動を起こし続けることで、自分の理想を手に入れることができるようになります。
それはまさに、目標達成の生き方と言えるのです。
その一方で「受動的推論」を多く使う場合、行動を起こさずに自分の内面世界を変えていきます。
行動が無いということは、何かが生まれることもありません。
つまり外側の現実は何一つ変わらず、その現実に甘んじた生き方となってしまうのです。
どちらの生き方が幸せかについては、人それぞれの考え方があるので言及しません。
しかし、自分の可能性を広げるのは「能動的推論」の生き方のように思います。
脳はこのどちらかを選択するわけですが、全部が全部どちらかに偏るということはありません。
ケースごとに最善のアプローチを取れるといいですよね。
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