
良好な人間関係を維持するために、常に心がけるべきことがあります。
そのときのノリであることをしてしまうと、後々になって自分の首を絞めることになりかねません。
では何を心がけるかというと、人の悪口を軽はずみに流さないということです。
とくにネットに流してしまうと、そのウワサはどこまでも広がってしまいます。
SNSへの発信はタップ一回でできてしまいますが、本当にその言葉を発信してもいいのかを考えて欲しいのです。
この悪口がもたらす破滅的な結果をあらわした「風の中の羽毛」という、19世紀頃のお話があります。
今回はその内容をご紹介します。
悪口ばかり言う男
ヨーロッパのある町に、若い男が住んでいました。
彼はいつも同じ町に住む、賢い男性のことを目の敵にして、あることないこと悪口を言いふらしていました。
ある日のこと、いつも悪口ばかりを言っていた男は、人にケガをさせてしまいそのウワサが町中に知れ渡ることになりました。
どこにいってもケガをさせたことで後ろ指をさされる毎日です。
そして若い男は、自分が賢い男性の悪口を言いふらしていたことで、どれほど彼を傷つけていたかを知ったのです。
若い男はすぐさま賢い男性の家を訪れ、いままで自分がしたことを謝罪し、許して欲しいと頼みました。
するとその賢い男性は「ある二つの約束」を果たしてくれるのなら許すと、若い男に伝えました。
その約束の一つ目は、今から若い男の自宅に戻り、自宅の羽毛の枕を持って崖にいき、それをその場で切り裂いて、枕の中の羽毛を風の中にまき散らすというものでした。
若い男は、賢い男性の奇妙な約束に困惑しながらも、言われたとおりに自分の枕の羽を崖の上で風にのせてまき散らし、賢い男性の元へもどりました。
「一つ目の約束のとおり、枕の羽毛をまき散らしてきました。次の約束を果たせば、許してもらえますか」
賢い男性はもちろんと保証した上で、次の約束を伝えました。
「今から、そのまき散らした羽毛を全て拾い集めてきてください」
その約束を聞いた若い男は
「それは、どうしようもありません。まき散らした羽は、風に運ばれてどこまでも飛んでいってしまっています」
そう力なく答えました。
すると賢い男性は言います。
「もちろんそうでしょう。あなたは、本心から自分がしてしまったことを反省し、正そうとしているかもしれません。ですが、私が受けた損害を修復するには、あなたが先ほどまき散らした羽毛を回収できないくらい不可能なことなのです。あなたが口にしたことはすでに、あらゆるところに拡散してしまっているのです」
なぜ悪口が危険なのか
人は他人の悪評にはことさら敏感に反応します。
たとえそれがフェイクニュースだと分かっても、一度でも持ってしまった印象はなかなか拭い去ることはできません。
それほど悪口というのは、人に強い影響を与えるものなのです。
そしてその悪口が誰から発信されたのかは、いずれ明らかになってしまいます。
そのとき、悪口を言われていた人はどんなことをしても、復讐してやろうと考えるかもしれません。
ほんのちょっとした出来心から発せられた悪口であっても、言われ側が軽く受け取ってくれることはありません。
深刻に受け止め、自分の自尊心を傷つけられ、深い悲しみの底にたたき落とされてしまいます。
そのときの負のエネルギーは凄まじく、けっして忘れることはありません。
いじめた側は忘れても、いじめられた側は忘れないのと同じです。
やられた側はいつまでもその怒りを心の内にやどしているのです。
そしてその怒りが届けられるのは、相手にとって最も効果的なタイミングであることがほとんどです。
未来の自分を守るためにも、悪口は言いふらさないのが得策なのです。
言葉の力を甘くみない
「言葉は直接相手を殴るわけでもないので、ケガをさせることはない」
こんなことを言う人がいますが、果たしてそうでしょうか。
ここまで読んで頂いたあなたであれば、言葉の暴力ほど恐ろしいものはないと思えているのではないでしょうか。
ケガの場合は治療や時間の経過で治ることはあります。
ですが悪口によって受けた傷は、人生の全てを使っても治らないことがあります。
最悪の場合、その人の人生を台無しにしてしまうかもしれません。
一方で、思い遣りに溢れた言葉や、勇気や自信を与えられる言葉であれば、相手の心をより豊かに、より強くすることができるでしょう。
こうした暖かい言葉は、人が成長していくために必要な心の栄養でもあります。
どのような言葉を口にするかは、自分の自由です。
ただ、その言葉によってどのような結末が待ち受けるのかを考えることは、自分の人生だけでなく、より良い人間関係を作るうえでも大切なことになるでしょう。
コメントをお書きください