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人望のある人がやってる簡単なこと

 

「ワシを誰だと思っている!」

以前、デパートで買い物をしていたときのことです。

フロア中に響き渡るような声量で叫ぶ、70代とおぼしき男性がいました。

来ているスーツも上質なもので、サラリーマンという感じでもありません。

そんな男性が感情をむき出しにして、店員さんを怒鳴りつけていました。

 

もちろん店員さんになにかしらの不備があったのかもしれませんが、そこまで感情的になる必要はあるのかというくらい、怒り心頭の様子でした。

 

ただ僕が気になったのは感情的になっていることよりも冒頭のセリフです。

「ワシを誰だと思っている!」

これって本人が、「自分は地位の高い人間だ」と自覚していて、そのうえ店員さんを見下しているからこそでてくるセリフのように感じるのです。

 

地位や功績というのは恐ろしいもので、それに溺れてしまう人も世の中にはいるかもしれません。ですが、どんなに功績があるとしても謙虚さを持ち続けることが大切ですよね。

そして、自分が悪いと思ったら、潔く謝ることができる人でありたいものです。

 

 

2001年から5年間、アメリカの国務長官を務めたコリン・パウエル氏はその著書『リーダーを目指す人の心得』の中で、興味深いエピソードを紹介しています。

 

 

駐車場係の人たち

 

ある日、パウエル国務長官が警備担当者の目を盗み、オフィスから出て駐車場まで降りてみたことがあったそうです。駐車場の運営は外部委託されていて、働いているのはだいたいが移民や少数民族です。給与は最低賃金に近いレベルでした。

 

長官が慣れない場所を散策していると、長官が道に迷ったのだろうと思ったある係員が「帰り道をご案内しましょうか?」と声をかけたのです。

長官が「いや、迷ったわけじゃないよ、君たちと少し話しができたらと思ってきたんだ」と言うと、彼らは驚きながらも喜びました。

 

長官が「仕事はどうだい?」「出身はどこ?」「排気ガスは問題ないかい?」と、色々尋ねると、彼らはにこやかに大丈夫と答えました。

そしてしばらく雑談したあと、長官は前から不思議に思っていたことを聞いてみたのです。

 

 

車を停める位置はどうやって決める?

 

「ところで、毎朝、車が次々と到着するだろう。その時、出口に近くて車を出しやすい位置にどの車を停めるのか、どうやって決めているんだい?」

長官は長年の疑問をついに投げかけました。

 

というのも、そのオフィスの駐車場はかなり狭く、職員の車を停めようとすると、車への乗り降りがギリギリできるほどのスペースを空けて停めるほかりません。中には車を出しにくい場所もあります。

駐車場係の彼らは、毎朝ものすごい苦労をして車を詰め込まなければなりません。その際に、どうやって車を停める位置を決めているのか、長官は前々から不思議に思っていたのです。

すると係員たちは顔を見合わせて笑いながら、こう答えました。

 

「国務長官殿、その方法なんですけどね……。ここに着いたとき、車の窓を開けてニッコリ笑いかけて、オレらの名前を呼んだり「おはよう、今日もよろしくお願いするよ」なんて声をかけてくれる人は、出やすい場所に停めますね。そんで、オレらになんて見向きもしないような人や、オレらがまるで存在していないような態度の人の車は、まあ、出しにくい場所に回されますね」

 

このあたりで長官はニッコリと笑って礼を言い、自分を探しているであろうSPのところへ戻ったのでした。

そして長官は、次の会議で早速、この話しを幹部たちに聞かせ、次のように言いました。

 

「このオフィスで働く人に対して、敬意や思いやりを持って、優しい言葉で接して悪いことなど一つもない。どの職員も欠くことのできない人間だ。そして、どの職員も、そのように扱われたいと思っている」

 

 

「承認」すること

 

敬意や思いやりを持つことや、優しい言葉をかけること、これらは難しいことではありません。

特別な技術も必要ありませんし、訓練を受ける必要もありません。ただ、そうしようと意識するだけで誰にでもできることです。

そして、人は誰でも「承認」を求めています。もちろん僕も同じです。

組織に属しているひとり一人に価値があり、誰もがその価値を認められたいと思っているのです。実際にパウエル元長官は著書のなかでこう述べています。

 

「毎晩、私の執務室を掃除してくれる人は、大統領や将軍、政府閣僚と同じ人間である。だから私はありがとうと一声かける。それだけのことをしていると思うからだ。自分のことを単なる掃除人だなどと思ってほしくない。彼らがいなければ、私は自分の仕事を全うできない。国務省全体が彼らの仕事にかかっていると言っても過言ではない。組織が成功するとき、その仕事にくだらないものなどない。ただ、これほどわかりやすく、簡単に実行できる原理を理解できない、くだらないリーダーが多すぎるだけだ」

 

 

地位があってもなくても

 

地位があるからこそ、地道な仕事に取り組んでいる人たちに感謝の気持ちを持つことが大切になります。

ふんぞり返って「お前らなんて、代わりはいくらでもいるんだ!」と、わめきちらしてる人のもとで、丁寧な仕事をやろうとなんて思えません。

どんな仕事であっても、組織を支えてくれているのです。リーダーの立場にあるのならば、思いやりをもって、誰に対しても丁寧に接する必要があるのではないでしょうか。

 

そして地位がなかったとしても、同じように相手に敬意を払うことが大切だと思うのです。

これは自分の組織内だけではなく、冒頭にあった店員さんに対しても大切な姿勢なのではと思います。

そもそも店員さんが「あなたには売りたくないです」ってなったら、どれだけ欲しいものでも手に入れることができませんからね。

ものを買ってくれることもありがたいですが、ものを売ってくれることも同じようにありがたいことだと僕は思います。

 

誰に対しても等しく敬意を払う。

それが気持ちのよい人間関係に繋がっていくと僕は思うのですが、あなたはどう感じましたか?

 

 

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