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人を動かす唯一の土台

 

人を動かす立場になるのは、思った以上にありふれたことだったりします。

職場で部下を持つ他にも、友達と旅行の計画を練ったり、家族を取りまとめる場面であったり、日常のあらゆる場面で人を動かす立場になってしまうことがあります。

そういったとき、周囲の人が素直に動いてくれるかどうかは、ある一つの土台があるかどうかで決まると言っても言い過ぎではありません。

 

その土台というのが「信頼関係」です。

 

たとえ厳しいことを言ったとしても、ちょっとやそっとじゃ壊れないだけの信頼関係を作っておかないと、人に動いてもらうことはできません。

なぜなら、信頼関係がないとどれほど正しいことであっても「この人が嫌いだから」といった、好き嫌いの感情論によって拒否されてしまうからです。

 

職場であればメンバーと一致団結して部門の成果をだしたり、友人関係であればそれぞれの意見をまとめてあげたり、家族であれば気持ち良くお手伝いしてもらったり、それぞれの場面で気持ち良く動いて貰わなければなりません。

そこに信頼関係がなければ、関係が崩れてしまうことを恐れて本音を言えなかったり、仕事をお願いできずに自分が背負うことになってしまいます。

 

信頼関係があるからこそ、遠慮なく相手にお願いすることができるのです。

 

 

信頼関係を損なう原因

 

これは僕が経験したことですが、以前に勤めていた会社で一人の上司がいました。

彼は気分屋で思いついたことをすぐに口にしたり、部下をバカにするようなことを呼吸するようにしていました。

もちろん慕われるはずもなく、部下からは煙たがられる存在です。

 

彼が仕事の指示出しをするわけですが、僕を含めたメンバーは言われたことの最低限のことしかやりませんでした。

誰もプラスアルファの仕事をやろうという気になれなかったのです。

 

そうなると結果的に成果もさほど上がらず、上司はイラ立つだけ。

もともと気分屋なので感情的な物言いになり、部下を労うなんてことはせず、部下の話を遮って部下のダメ出しばかりになります。

そのダメ出しについても、客観的に何が悪いこうしたほうが良いといったことではなく、「ほんとに役立たずだな」

「なんでそんなこともできないんだ?」

「能なしに何を言っても無駄だな」

といった、相手の自尊心やプライドを傷つける言葉のオンパレードでした。

 

結果的にメンバーとの関係性は崩壊していき、言われたことだけをやるだけで成果なんてものはありません。

まずいことがあったとしてもそれを隠すようになり、後々になって大問題になるなんてことも数えればキリがありません。

 

このように相手を傷つけることは、信頼関係を損なう最大の原因なのです。

 

 

信頼を築くためには

 

シンプルに言えば、さきほどお伝えしたことと逆のことをすればいいだけです。

じゃあまずは何から始めればよいのか?

それは「人格を磨く」ことから始めなければなりません。

相手の話しを聞かずに、自分のやり方や考えを一方的にわめきちらして駄々をこねるのは、子どもでもできることです。

つまり人格を磨き、未熟さを取り除き、人間性を高めなければならないのです。

 

未熟な人は相手を尊重する前に、自分のことを尊重するように求めます。おわかりのとおり、それで尊重してもらえるはずがありません。人から尊重されたいのであれば、まずは自分が先に相手を尊重しなければなりません。

 

さきに紹介した上司とは対照的に、部下から慕われている上司もいました。

彼は部下の意見に耳を傾け、失敗をしても感情的にならず、まずは解決策を考え、あとから一緒にいたらない部分を振り返るといったような関わり方をしていました。

慕われている上司はまず自分から部下に歩み寄り、不安の解消に務めていたのです。

 

これは部下の顔色うかがいをするといったようなことではありません。ときには厳しいことも伝えていました。

慕われる上司がしていたのは、部下を認めてあげることだったのです。

たとえ失敗したとしても、一連の流れの中にある良い部分を必ず見つけ出そうとしていました。

否定ではなく認めてあげる。

この積み重ねで、信頼関係という土台を作り上げていたのです。

 

 

人格は行動によってのみ磨かれる

 

人格は自分が相手にどのような態度を取るのか、その積み重ねによって磨かれます。

相手が失礼な物言いをしたとしても、感情的にならないという行動をとれるかどうか。

相手が言うことを素直に聞かなかったとしても、冷静に穏やかに話し合うという行動をとれるかどうか。

相手との間に生まれる行動の一つ一つに丁寧に向き合い、自分のいたらない部分を見つけては改善していくほかありません。

 

もちろんのことながら、こちらがどれだけ誠意を尽くして向き合ったとしても、相手から悪意に満ちた対応をされることもあります。

心理学には「人格障害」という言葉もあり、人と良好な関係を作ることができない人も一定数存在しています。

そんな人との関わり方を改善するように働きかけるのも良いですが、その人がチームにいることで障害が生まれるようであれば、ときには心を鬼にしなければならない選択もあるでしょう。

 

苦渋の選択をするときにも、感情的にするのか誠意を持ってするのかで、それを見ていた周囲の人の関係性へ与える影響も違ってきます。

 

 

人を動かす人は・・・

 

ここまでお伝えしてきたように、人を動かすためにはまず、人の心を動かさなければなりません。

そして人の心を動かすためには、自分の心を「人を尊重する」という心に作り替える必要があります。

これもとても大切なことなのですが「人を動かすために相手を尊重する」という考えは、逆効果となります。

相手はこちらの思惑を敏感に感じ取り、逆に警戒心を抱かせてしまいます。

そうではなく、相手を尊重することからスタートするのです。

すると結果的に、相手が動いてくれるようになるのです。

 

つまり権力や恐怖を使わずに人を動かせる人は、相手を尊重することを当たり前にすることで、自動的に相手が動いてくれるようになるのです。

テクニックとして作為的にするのもいいですが、相手に感づかれてしまうリスクを拭い去ることはできません。

 

相手を尊重することを心の底から想うほうが、自分も気分がいいし最も効果的なのです。