僕は毎日、最低でも一時間は読書にあてています。
先日ある本を読んでいたとき、その内容になんだかな~と思う記述がありました。
書籍名は伏せておきまずが、コミュニケーションや仕事術について書かれている本です。
そこに書かれていたものの一つに、アメリカのニクソン政権時代の国務長官、ヘンリー・キッシンジャーの逸話を紹介して、かくあるべきということがありました。
ただ僕はその内容を見たときに
「いや、それは効率が悪いし、部下のモチベーションが下がるでしょ」
と感じたんですね。
今回はそのことについてご紹介したいとおもいます。
キッシンジャーがやったこと
キッシンジャーは部下に、とある資料の作成を依頼しました。
部下は必要な情報を調べ、それなりのボリュームのある資料を作りあげ、キッシンジャーに持っていきます。
するとキッシンジャーは、その資料を1ページもめくることなく、その場でゴミ箱にバンとたたき捨て
「やり直し!」
と部下を怒鳴りつけました。
部下からすれば、せっかく作った資料を見もせずに捨てて、やり直しを言い渡されたわけです。
面白いはずがありません。
ですが相手は国務長官です。
それ相当の権力を持っているため、仕方なしにもう一度資料を作りました。
再度、資料を持って行くと、また同じように見もしないでゴミ箱に捨てて
「もっと考えろ!」
と怒鳴りつけます。
部下は仕方なく、一生懸命考えて作り直して、3回目の提出をします。
するとキッシンジャーはようやく資料を見てくれて、そして部下にこう聞きました
「3回やり直して、最初とまったく違うカ所はあったか?」
「あります」
「誤字脱字は見つかったか?」
「ありました」
「それならなぜ、最初からこの状態で持ってこないんだ!」
そう叱責したのです。
著者の考え
本の著者は、このエピソードを紹介しつつ
「上司には入念にチェックをして完璧なものを持っていかなければならない」
と声高に訴えいるんです。
上司との接し方はそれくらい完璧なものでなければ、上司に認めてもらえないということなんですね。
さらに著者は
「もっとも重要な顧客は、社外のお客様ではなく、あなたの上司だ」
とも言っています。
その理由は、あなたにチャンスをくれるのは上司だから、上司に認めてもらうことを最優先にしなさいということです。
確かに常に中途半端なものを持っていけば、上司からの評価を得られることはないでしょう。
ですがお客様の顔をみずに、上司が喜びそうな提案をしてなんになるんでしょうか?
そんなもので本当にお客様を満足させることができるのでしょうか?
そのような取り組みをし続けたことで、お客様本位ではなく、会社本位のサービスしか生まれずに、世界から取り残されたのではないかと思うのです。
キッシンジャーのマズイところ
ここで先ほどのエピソードに立ち返ります。
もしもここに登場していた部下が、真剣に考え完璧な資料を最初から作っていたとしたらどうでしょうか。
おそらくキッシンジャーは最初の資料なので一切みることなく、自分の身勝手な思い込みで部下の仕事を否定するはずです。
結局のところ、最初に完璧に仕上げても相手の思い込みで勝手に「不出来な資料」にされてしまうだけです。
これほど失礼な態度は無いのではないでしょうか。
そんなことをされて、気持ち良く仕事に取り組めるはずがありません。
部下の仕事に敬意を払うこともしなければ、自分の勝手な思い込みだけで行動しているといえます。
こんな訳の分からない理由で仕事を否定されたなら、上司を尊敬するよりも前にいつか足元をすくってやろうという復讐心を抱くだけです。
このような態度で部下との関係性を築くなんてことはできません。
そもそもキッシンジャーは資料を一切見ずに捨てているわけですから、同じ内容のものを提出してもわからないのです。
さらに言えば、最初から完璧を目指そうとした場合、最初の資料が出来上がるまでに相当の時間がかかります。
さらに三度もやり直しをさせていざ中身を見たとき、万が一、資料の方向性が間違っていたならそれこそ目も当てられません。
スタートの段階で間違った方向に走っていたわけです。
そしてずっと走らせた後で
「そっちじゃなく、こっちの方向に走れ!」
なんて言われたら、仕事を投げ出したくもなるでしょう。
このような場合は、大枠ができた段階で方向性が正しいかどうかの確認をするほうが、後々の無駄な時間を解消することができるのです。
つまりキッシンジャーのやり方は
・部下の自尊心を傷つける
・仕事の効率が悪い
という観点からも、推奨できないものとなっているのです。
コーチ的かかわり
僕としてはキッシンジャーのやり方は、推奨しないどころか、撲滅したほうが良いと考えています。
あのような高圧的かつ萎縮させるようなやり方をくりかえせば、部下から恨みをかい、うとましがられるだけです。
もちろん時代ということもあるでしょうが、もうそのようなやり方は通用しません。
大切なのは相手が部下であったとしても、関係性を築いていくというアプローチを取ることです。
部下に仕事を頼むときは
「アウトラインができたら、確認しにきてください」
と、方向性のすり合わせをすることを告げること。
資料を作ってくれたのなら、労いの言葉を投げかけ確認すること。
資料に不備があったのなら、具体的に指摘すること。
もちろん上司が忙しくてすぐに確認ができない場合もあるでしょう。
そのときは、後で確認することを伝えればいいだけです。
大切なのは部下をないがしろにせず、すり合わせ・感謝・確認の3つを心かげることです。
そうすれば部下も、自分の仕事が認められていると実感できるため、意欲的に仕事に取り組めるようになるでしょう。
部下との関係性を築く。
それがより良い仕事をおこなうための秘訣なのです。
決してキッシンジャーのように、部下の気持ちをへし折るような対応はしないように注意してくださいね。
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