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「もっともらしさ」を疑おう

 

あなたは「スケアード・ストレイト・プログラム」というものをご存じでしょうか?

これは、非行少年や、非行を犯す危険性が高い少年に、刑務所での暮らしや成人受刑者との交流を実際に体験させて

「こんなところになんて、入りたくない」

と思わせて、犯罪防止を狙ったプログラムのことをいいます。

 

この取り組みは実際にアメリカで実施されて、大反響をよんだ青少年教育プログラムでした。

 

 

具体的な内容

 

スケアード・ストレイト・プログラムは、具体的にどんなプログラムなのかを紹介します。

この取り組みは囚人達の協力が欠かせません。

そのためこのプログラムを実施する刑務所では、事前に囚人達にプログラムの意図を伝えます。

 

囚人達も人の子なのか、子どもが犯罪者になることを望んではいません。

そのためとても協力的でした。

囚人達に与えられた役割は、子ども達を徹底的に怖がらせること。

ただし、手を出してはならないといったものでした。

 

もちろん囚人達は牢屋の中に入っているため、子ども達と直接触れあうようなことはありません。

そのかわりに、罵詈雑言を浴びせかけることを求められました。

 

子ども達は刑務官と一緒に、殺人を犯した囚人が入っている牢屋の前の廊下を歩きます。

そのときあらん限りの暴言を浴びせかけられ、恐怖心を植え付けます。

そうすることで子ども達は、こんな場所に入ったら何をされるかわからない、犯罪なんてしないほうがましだと思うようになるというものでした。

 

 

絶賛の嵐

 

このプログラムが発表されたとき、多くの保護者は「これこそが最高の犯罪抑止教育だ」と、こぞってプログラムに応募したのです。

すぐに定員は一杯になり、なんども繰り返し行われることになります。

 

また他のアメリカの州でもこのプログラムを取り入れ、アメリカ全土でこのプログラムが実施されることになりました。

 

このプログラムに子どもを参加させた親からは、子どもが刑務所に入るなんてまっぴらだと言うようになって、粗暴さが和らいだと感謝の声が届くようになりました。

 

このプログラムのことはニュースでも取り上げられるようになり、またたく間に参加者で溢れかえるようになったのでした。

 

 

わかりやすさ

 

さて、あなたはこのプログラムについてどう感じたでしょうか?

非行の恐れのある子どもを刑務所につれていき、罵詈雑言を浴びせかけ恐怖心を植え付ける。

その結果、犯罪行動を抑止する。

とてもシンプルでわかりやすいストーリーになっていますよね。

確かにこれなら効果があるかもしれないと思ってしまいます。

 

ではこのプログラムを受けた子ども達がその後どうなったかというと、非行に走る確率が増加したという結果が出てしまったのです。

 

なぜより非行に走るようになったのかというと、子ども達は

「こんな脅しに屈してしまうほどダサくない」

と考えるようになり、自分の強さをアピールするために罪を犯すようになったのでした。

 

さきほどの親からのアンケートも

「アンケートに答えてくれる親」

からのみのものだったんです。

 

そもそも子どもに問題があるという家庭においては、親に問題があることが多く、その多くは子どもに無関心であったりします。

そのため本当に問題を抱えている子どもの親からは、アンケートの回答が得られていなかったのでした。

 

 

もっともらしさがミスを生む

 

スケアード・ストレイト・プログラムように、分かりやすくもっともらしいストーリーがあると、人は深い考察をすることなく信じてしまうことが起きます。

その結果、間違った方法であってもそれが正しいものとして認識されてしまい、悲惨な結果を生み出すなんてことも起きてしまいます。

 

一昔前には「瀉血」と呼ばれる、患部から悪い血を抜くことで病気を治すという治療法が信じられていました。

いまでこそ医学が発達し、患部から血を抜いたところで効果がないことは周知の事実ですが、医学が発達していない時代は「もっともらしく」聞こえてしまいます。

 

そのため弱っている患者から血を抜き、さらに体力を奪い病状を悪化させてしまうなんてことが起こっていたのです。

 

 

 

 

この「わかりやすくもっともらしい説」には、多くの罠が潜んでいる場合があります。

人のそういった性質を利用して、信じさせようとする悪意ある人もいるかもしれません。

わかりやすくもっともらしい話が出てきたときほど、その根拠や証拠に目を向けるようにしてください。

 

そうすることで間違った判断を予防することができます。

わかりやすいストーリーには注意してくださいね。