· 

なんとも言えない出来事

 

今回のブログはつい先日にあった、出来事についてとなります。

いつもならお役立ち情報をお伝えしているのですが、今回に関してはお役立ち情報はどこにもありません。

そういったものはないのですが、あなたならどのような判断をしたのかをぜひ考えていただければなと思います。

 

 

大通りの交差点にて

 

日も沈んで街灯がともりだした頃、徒歩で移動中に大通りの交差点で信号待ちをしていました。

目の端に動くものがあったのでそちらを見てみると、歩道に近い車道で痩せ細ったおじいさんが倒れ込んでおり、40代とおぼしき女性が声を掛けていたのです。

 

大丈夫かなと様子を見ていると、おじいさんは立ち上がり車道の端をとぼとぼと歩いてこちらに向かってきました。

腰は前のめりに曲がり、踏み出す足もおぼつきません。

手には小さなレジ袋を持ち、バランスが悪いせいか袋が前後に大きく揺れていました。

そんな足取りで僕の前を通り過ぎたとき、信号が青に変わります。

 

おじいさんの動きがあまりに不安定なので、信号を渡らずその場でおじいさんをみていました。

小さな歩幅でよたよたと歩くうちに、はいていたズボンがずれてしまい、それが足に絡んで膝を突くように倒れ込んでしまったのです。

下着も見えているのですが、大人用の紙おむつをつけているのが分かりました。

 

これはダメだと思い、すぐにおじいさんの元に駆け寄り声をかけましたが、反応はありません。

ただ両手をついてうつむいたままです。

その近くを左折してきた車が通り過ぎていきます。

危険な状態ですが、一向に立ち上がろうとしません。

きっと力が入らなくて立ち上がれないのでしょう。

車道にいては危ないので、後ろから脇に手を入れ、おじいさんを立ち上がらせ、ゆっくりと歩道へと誘導しました。

すると最初に声をかけていた女性も心配になったのか、こちらに駆けつけてくれました。

 

おじいさんは歩道でもうずくまったまま。

声をかけても反応はありません。

着衣にはところどころシミのような汚れがついています。

はいていたズボンも倒れたからなのか、破れていました。

ホームレスほど汚れているわけではないので、認知症による徘徊の可能性が高いと判断しました。

 

女性は救急車を呼びましょうかと言ってくれたのですが、この場合は警察で保護してもらったほうがいいと伝えると、女性から警察に連絡をいれてくれました。

現場の交差点名を伝えているとき、おじいさんが立ち上がり歩き出したのです。

足を踏み出すたびにズボンがずり落ちてくるので、また転倒してしまうかもしれません。

なので通報は女性にまかせ、おじいさんをその場にしゃがませるようにしました。

これ以上動かないように、おじいさんの前に僕もしゃがんで、もうすぐ警察の人が来てくれるからこのまま待つようにしようと、声をかけ続けます。

 

返事や反応はありませんが、立ち上がろうとせずにじっと待ってくれるようにはなりました。

 

 

警察到着と事情聴取

 

警察の到着を待っているなかでも、おじいさんに痛いところはないか、住んでいる場所は近いのか、一緒に住んでいるご家族はいるのかなど、質問をしますが一切反応はありません。

それでも声を掛けることで安心を与えることができるので、声をかけつづけます。

 

その間に女性が、一緒にいてくれてよかったですと言ってくれたのですが、それは僕も同じです。

一人だけで対処するとなると、通報しながらおじいさんが転倒しないようにしなければなりません。

女性がいてくれたお陰で、おじいさんの安全を確保したうえで通報ができたのです。

きっと女性にも用事があるのに、こうして対応してくれていることに感謝を伝えました。

 

女性には友達がいたようで、しばらくは離れた場所から様子をみていたのですが、通報したあたりからそばに寄ってきてくれていました。

 

しばらく待っているとパトカーが到着し、男性警官と女性警官が降りてきます。

男性警察官がおじさんに声をかけ、女性警官が通報者の事情聴取をとるという図式です。

 

通報したのは女性でしたので、詳しい状況を僕の意見を聞きながら話しています。

僕はおじいさんからは離れ、女性と向かい合う形に立ち、事情聴取の様子をみていました。

 

そのとき、なにげに視線を足元に動かしたときに、違和感を持ったのです。

あらためてその違和感を探ってみると、通報してくれた女性はゆったり目パンツをはいていたのですが、そのチャックが全開になっていたのでした。

 

ゆったり目なので、下着が見えることはないのですが、さすがにチャック全開のままというのはよろしくありません。

真剣な表情で女性警官と話しているのですが、僕の頭の中では「マジか~」という驚きと、目の前に繰り広げられる真剣さと滑稽さのアンバランスに、どうしても笑いがこみ上げてきてしまいます。

 

これはエライことになったと思う反面、最高のネタができたという嬉しさ、そして目の前のシュールな光景に感情は乱れに乱されました。

 

 

どう伝えるか?

 

そのとき、事情聴取を受けている女性の友人がさらに近くに来てくれたのです。

そこで僕は全開女性に直接伝えるのではなく、女性である友人から伝えてもらったほうがまだいいだろうと思い、友人の女性に伝えることにしました。

 

「用事があるのに待って下さってありがとうございます。

 あの、ちょっと僕のほうから伝えるのはアレなので

 ご友人から伝えていただけると嬉しいのですが

 いま事情聴取を受けている方なんですけど

 チャックが開いてしまっているんです。

 なので終わってからでいいので、伝えてあげてもらえますか」

 

と伝えました。

 

その女性も、いいですよと言ってくれてホッとしたそのとき、事情聴取が終わりました。

すると友人の女性が「チャックが~」と言い出したのです。

 

(マジで!?この場面で言う!?)

と驚いていたのですが、どうもその女性は男性のズボンがずり落ちているのを見ていたことで、男性のチャックが開いていることを伝えてと勘違いしていたのでした。

 

それを聞いた聴取を受けていた女性が、女性警官に

「そうそう、男性の方なんですけど、ズボンのチャックが~」

と言い出したのです。

 

僕は簡単にいうと「教える系」のお仕事をしているわけです。

なので間違いなどがあると、どうしても指摘したくなってしまうんですね。

そのとき咄嗟に

「あ!男性のチャックではなくて、あなたのチャックのことなんです」

と言ってしまったのです。

 

それを聞いた友人は女性の股を指さして

「ほんまや!全開になってる~~!!」

と、交差点に響き渡る声量で指摘することに。

 

こっそり伝えるようにしたのに、大声で伝わってしまったのでした。

 

その後はもう大爆笑。

「これ、緩いのですぐに下がっちゃうんです~」

と謎の言い訳が飛び出したり

「だから前から言ってたやん!それもそう、すぐに捨て!」

「それよりチャック全開で真面目な顔して事情聴取て!」

「うわ~、めっちゃ恥ずかしい!」

と大騒ぎ。

 

僕は「気を付けてくださいね~」と意味のわからない注意喚起をして、立ち去ろうとしたのですが、信号が赤に変わってしまい、その気まずい状況の中、信号が変わるまで待たなきゃいけないという地獄のような時間を過ごすことに。

 

その後ろでは女性の笑い声とツッコミのやり取りが聞こえるのですが、振り返ることなんてできません。

信号がはやく変わることをここまで強く思ったことは、これまでの人生で初めてでした。

 

 

 

おじいさんを助けて、安全を確保して警察に保護を依頼したまではよかったんです。

でもその後の対応って、何が正解なんでしょうね?

 

黙ったままのほうが良かったのか…。

あなたならどうしますか?