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嘘をつく心理とそのリスク

誰しも一度は、嘘をついたことがあるのではないでしょうか?

 

「バレないと思ったから」

「相手を傷つけたくなかったから」

「自分を守るためだった」

 

嘘にはさまざまな理由があり、必ずしも悪意だけで語れるものではありません。

しかし、だからといってが簡単に許されるかというと、そうでもないのが現実です。

 

今回は、「人がなぜ嘘をつくのか」という心理背景から、「嘘をつくことで起こるデメリット」、さらには「うまい嘘」の構造的な特徴についても、心理的な視点を交えながら解説していきます。

 

 

 嘘をつくときの心理とは?

 

人が嘘をつくときの心理には、大きく3つの動機があるといえます。

このような状況に直面したときに、嘘の魔の手に絡め取られないためにも、ぜひ知っておいてくださいね。

 

1)自己防衛

もっとも多いのが、自分を守るための嘘です。

たとえば、上司に怒られたくないから言い訳をするとか、恋人との関係を壊したくなくて本音を隠す、といったケースがこれに当たります。

自己防衛としての嘘は、一時的にはトラブルを避けられるように見えますが、長期的に見ると信頼の損失につながるリスクが高くなります。

 

2)他者操作

これは相手をコントロールしようとする意図からくる嘘です。

たとえば、「みんなそう言ってるよ」「〇〇さんもそう思ってる」と、実際には存在しない多数派を装うことで、自分の意見に同意させようとするパターンなどが代表的です。

他者操作型の嘘は、ビジネスや政治、家庭内などあらゆる場面で起こりますが、非常に破壊力のある嘘です。

相手の判断を歪めるだけでなく、関係性そのものを脆くしてしまうこともあるので、非常に危険な嘘といえるでしょう。

 

3)社会的同調

自分が浮かないようにするための嘘も、無意識に出てくることがあります。

「本当は違う意見だけど、みんなに合わせて賛成する」

「知らないのに、知ってるふりをする」

このような嘘は、自己肯定感の低下や自信のなさが背景にあることも多く、自分を守るための仮面のような役割を果たします。

 

 

 嘘が生むデメリットとは?

 

嘘をついてしまうとその場はなんとか切り抜けられるかもしれません。

ですが、その嘘がバレてしまったときや、嘘を押し通そうとするとき、正直に話した場合以上の損失を受ける場合があります。

嘘のデメリットは無数にありますが、なかでも代表的なものを3つご紹介します。

 

1)信頼の崩壊

当たり前のことですが、「信頼」が失われることです。

嘘がバレたとき、人は「事実」以上に「裏切られた」という感情に傷つきます。

しかも一度壊れた信頼は、再構築するのに非常に長い時間がかかります。

場合によっては、二度と元に戻らないこともあるでしょう。

たとえ何十年の付き合いであったとしても、たったひとつの嘘で全てが壊れることも少なくありません。

 

2)自己否定と罪悪感

嘘をつくと、その瞬間はラクになりますが、心の奥に自分への不信感が残ります。

「本当の自分では受け入れてもらえない」

「結局、自分は偽ってしか生きられない」

こうした気持ちが積み重なると、自己肯定感が下がり、やがて自分自身を信用できなくなってしまうのです。

また、嘘をついたことで自分は守られたとしても、つじつまが合わないことで相手が困るかもしれません。

そんな姿をみたときに、なんてことをしてしまったんだと後悔することになります。

でも一度ついた嘘は取り消すことができません。その罪悪感は消えることなく、残り続けることになってしまいます。

 

3)認知的不協和のストレス

心理学では、嘘をつくと「認知的不協和」が生まれると言われています。

これは、「自分の言っていることと、本当の気持ちが一致していない」状態を脳がストレスとして認識する現象です。

この状態が続くと、集中力の低下や不安、焦燥感、さらには身体的な不調にもつながっていきます。

また、嘘がいつバレてしまうのかという恐怖に、さいなまれることになります。

嘘をついたその瞬間はいいかもしれませんが、その後に続くのは、疑心暗鬼まみれの日常です。

 

 

バレない嘘のつき方

 

人が見抜きにくいうまい嘘には、ある特徴があります。 それは、「事実の中に、ひとつだけ小さな嘘を混ぜる」こと。

そしてその嘘は、裏取りで矛盾が生まれないように、他者が関与しないものにします。

ほとんどが事実のため、そのなかに証明できないことが紛れ込んでいても、疑われにくくなるのです。

 

たとえば、仕事の途中で急にやる気がでなくなって、仕事を放り出して誰にも伝えずに帰ってしまったとします。

後から会社から「いまどこにいる?」と連絡がきたとき、得意先に行っているや、資料整理をしているなど、仕事をしているような嘘をついてしまうと、矛盾が生まれて必ずバレてしまいます。

 

こうったときは、会社を出た時間や、今いる場所をそのまま正直に伝えたうえで

「急に体調が悪くなってしまって、そのときに周りに誰もいなかったので、つい連絡もいれずに帰ってしまいました。申し訳ありません」

と、「体調不良」という嘘だけを紛れ込ませるのです。

勤務中に体調不良ではなかったことを証明することは不可能ですので、たとえ怪しくても受け取らざるを得ません。

 

このように、全体のストーリーは現実に即していて矛盾がないため、聞いている側は違和感を覚えにくくなります。

また、嘘の中に他人が関与しないというのも重要なポイントです。他人が関係していると、その人との整合性を取る必要が出てきて、矛盾が生じやすくなるからです。

つまり、「うまい嘘」は事実に限りなく近く、かつ誰の証言にも影響を与えない構造になっているのです。

 

 

嘘とどう向き合うべきか?

 

嘘はだと一刀両断にすることもできます。

ですが、嘘をつく心理には必ず理由があり、その背景には「傷つきたくない」「受け入れられたい」という人間らしい欲求が潜んでいます。

 

だからこそ、大切なのは「なぜ自分は嘘をつきたくなったのか?」という問いを持つこと。

その問いによって、自分の本音や弱さと向き合うことができるようになります。

また、誰かの嘘に気づいたときも、その奥にある不安や恐れを想像できたとき、人間関係に新たな優しさが生まれるかもしれません。

 

 

 

嘘は、人間の心の動きそのものです。

完全になくすことはできないかもしれませんが、嘘に込められた感情や目的を理解することで、自分や他者との関係性をより深く見つめ直すことができます。

大切なのは、「嘘を責めること」ではなく、「なぜ嘘をついてしまったのか?」に目を向けること。

そうすることで、もっと正直に、もっと安心して人と関われるようになれますよ。