
会議や商談、一緒に遊びにいく場所など、オフィシャルでもプライベートでも、自分の要望を叶えたいとき、誰でも言葉巧みに“説得”をしています。
この説得のうまさで人生の充実度が変わるといっても、言い過ぎではないかもしれません。
いかに相手を“説得”するかは、人類が言葉を獲得してから、磨きに磨かれ続けていると言えるでしょう。
そんな“説得話法”ですが、実は2400年前からあらゆる説得話法を退け、いまだに受け継がれる理論あることをご存じでしょうか?
今回のブログは、2400年前の知の巨人が生み出した説得話法をご紹介します。
アリストテレスという天才
アリストテレスという天才をご存じでしょうか?
今から約2400年前、古代ギリシャで活躍したこの哲学者は、「人間とは何か」「社会とはどうあるべきか」といった根本的な問いに生涯をかけて向き合い、のちの学問や思想に計り知れない影響を与えました。
プラトンの弟子として学び、のちにはアレクサンダー大王の教育係も務めたとされる彼は、論理学・倫理学・政治学・自然科学など多くの分野を切り拓いていきます
そんなアリストテレスが特に力を入れたのが、「人はどうすれば他者を動かせるのか」というテーマです。
彼は、人間が他者を説得する際には、感情や信頼、論理といったいくつかの重要な要素が絡んでいると見抜き、それらを体系化して「説得の三要素」としてまとめました。
それが、「エトス(Ethos)」「パトス(Pathos)」「ロゴス(Logos)」という三つの要素です。
この三つの視点は、実は現代のプレゼンテーションや広告、カウンセリング、さらには日常会話に至るまで、あらゆるコミュニケーションの土台になっているんですよ。
ではこの三要素、それぞれどのような意味を持ち、どう使えば相手の心を動かせるのでしょうか?
ここから詳しく見ていきましょう。
エトスとは?
「エトス」とは、話し手の人柄や信頼感に関わる部分を指します。
たとえば、テレビで専門家が話していると、「この人の話なら、なんだか安心して聞けるな」と感じたこと、ありませんか?
また、誠実そうな人や、詳しそうな人の話って、つい真剣に耳を傾けてしまいますよね。
これは、「この人なら信じても大丈夫かもしれない」という、心の奥で働く信頼の気持ちが作用しているんです。
実際、どれだけ話の内容が正しくても、話している人にどこか疑わしさを感じてしまったら、「本当かな?」と疑ってしまいます。
そうなると、せっかくの説得も、なかなか届きません。
だからこそ、「エトス」つまり“信頼”はとても大切なんです。
自分がどういう人なのか、どんな経験があるのか、そして相手に対してどれだけ誠実でありたいと思っているのか——。
こうした“人としての信頼”を自然に伝えられることが、説得の第一歩になるんですね。
パトスとは?
「パトス」とは、相手の“感情”に働きかける力のことを指します。
私たちはふだん、理屈だけで動いているわけではありませんよね。
誰かの言葉に励まされたり、共感されたときに「よし、やってみよう」と思えたり、「この人の気持ち、わかるな」と心が近づくことがあります。そういうとき、まさに「パトス」が働いているのです。
たとえば、「○○さんも同じ経験をされたんですね」と言われたら、「あ、自分だけじゃないんだ」とホッとします。
また、「私もそのときは本当に悩みました」と話してくれる人には、「この人、わかってくれる」と親しみが湧くものです。
ビジネスの場でも、この「感情に訴える力」はとても重要です。
たとえば、ある商品を紹介するとき、「これを使うと腰の痛さが50%軽減されます!」と数値で示すのではなく、「実は、うちの母もこの商品を使ってから、本当に毎日が楽になったんです」と話されたら、一気にその商品が身近に感じられるのではないでしょうか。
心が動かされて、「使ってみたいな」と思えてくるはずです。
その他にもたとえば、新しい福祉用品を提案する営業プレゼンするとき
「私はこの商品に、本気で人生を変える力があると信じています。なぜなら、母が歩けなくなったとき、どんな介護用品を使ってもダメだったのに、これだけは違ったんです。はじめて笑顔で『歩けたよ』って言ったとき、涙が止まりませんでした。だから私は、この商品を一人でも多くの方に届けたいんです。単なる“製品”ではなく、“希望”を届ける道具なんです!」
ストーリーに自分の感情を乗せることでただの機能説明ではなく、その人の“情熱”が伝わってきますよね。
それが聞く人の心に響かせるのです。
感情というのは、人が行動を起こすための“スイッチ”のようなものです。
だからこそ、相手の気持ちに寄り添いながら話すこと、共感を丁寧に表現すること、そしてときに、自分の感情をオープンに伝えることが、説得力を生む大切なポイントになります。
「わかるよ」「私もそうだったよ」「大変だったね」——。
そんなシンプルな言葉でも、心に届けば、相手の中で何かが動き出すかもしれません。
ロゴスとは?
「ロゴス」とは、簡単に言えば“筋道の通った説明”のことを言います。
話の中に、論理的な構成や具体的な根拠があるかどうかを指しています。
聞く人が「なるほど、たしかにそうだな」と納得できるようなデータや事実、因果関係がしっかり語られていると、人は話に説得力を感じるんですね。
たとえば、何かを提案するときに、ただ「これがおすすめです」と言われるよりも
「このプランを選べば、年間で約15万円のコスト削減になります。実際に導入したA社では、半年で10%の経費が削減されました」
といった説明があると、聞く側としてはとても安心しますよね。
数字や事実というのは、感情に流されすぎず、冷静に判断するための支えになります。
「本当にそうなのかな?」という不安を和らげてくれて、「たしかに、それならやってみようかな」と前向きな一歩を後押ししてくれるんです。
たとえば、こんな日常の場面も「ロゴス」が活きています。
「この自転車は、他のよりちょっと高いけど、軽くて丈夫で、タイヤの寿命も2倍あるんだって。通勤のとき毎日使うなら、結果的にコスパはかなりいいと思うよ」
こう言われると、「高いけど、たしかに長持ちするならいいかも」と納得できますよね。
ただ「こっちのほうがカッコいいから」と言われるより、ずっと説得力があるはずです。
つまり、「ロゴス」は相手の“理性”に働きかける説得の柱。
「なぜそう言えるのか」「何を根拠にしているのか」を丁寧に示すことで、感情だけでなく、頭でも納得してもらえるのです。
エトス(信頼)やパトス(感情)と合わせて、ロゴス(論理)を備えた言葉こそが、人の心を動かし、行動を促す力になるんですね。
このように、アリストテレスが説いた「エトス」「パトス」「ロゴス」の三位一体のバランスは、説得を成功させるための黄金比とも言えるかもしれません。
次に誰かを説得しようとするとき、この三要素を思い出してみてください。
「自分は信頼されているか?」「相手の気持ちに寄り添っているか?」「筋道の通った説明ができているか?」――
この問いかけが、あなたの説得力を一段階高めてくれるはずです。
誰かの心に届く言葉を伝えるために、2400年前の知恵が今も生きているというのはスゴイことですよね。

Kindleで電子書籍を出版しました。
出版一週間で
など、計13部門で一位を獲得。
Kindle Unlimited会員の方は無料で読むことができます。
書籍ページはコチラ
↓ ↓ ↓
コメントをお書きください