先日、ある人が
AIが発達して身体を手に入れることができたなら、ロボットに働いてもらって、人間は働かなくてもすむようになる。
なので、毎日、自分のやりたいことをやれる世界になる。
といったことを話していました。
実際にイーロン・マスクも
AIやロボティクスの急速な進化によって、あと10〜20年のうちに「人間が生きるために働く必要はなくなる」と予測しています。
ですが個人的にはその考えには否定的なんです。
なぜ私がこの考えに賛同できないのか?
そこには、人間のある特徴が関係しているのです。
ロボットが働く未来は近い
まず、AIやロボットによって人間が働かなくてもいい社会が近づいているのかという点ですが、技術的にはかなり現実味を帯びてきていると思います。
いまではAIが様々なデータを作成し、アップロードすることもできるようになっています。
ですが、それだけでは人間の労働を大きく置き換えることはできません。
なぜなら、人間の仕事には、現実の物を動かす作業がたくさんあるからです。
荷物を運ぶ、物を組み立てる、介護をする。
こういった物理的な作業を代わりに行うためには、AIが考えるだけでは足りません。
実際に動く身体が必要になるんですね。
その身体にあたるものが、ロボットです。
今では卵を割ったり、針に糸を通すといった繊細な作業も実現しています。
つまり、AIが判断し、ロボットが実際に動くという組み合わせが整ってきているわけです。
この仕組みがさらに進めば、工場、物流、農業、建設、介護など、さまざまな分野で人間の労働は減っていくはずです。
なので、人間が働かなくてもいい社会が技術的に不可能かと言えば、そうではないと思います。
時間の問題で、そのような仕組みはどんどん現実味を帯びていくはずです。
ただ、ここで大切なのは、技術が可能にすることと、それが社会として実現することは別だということなんです。
AIとロボットが働けるようになったとしても、それだけで人間全員が働かなくてもよくなるわけではありません。
そこには、もう一つ大きな問題があるんです。
富の分配という問題
仮に、AIとロボットが多くの仕事を担うようになったとします。
工場ではロボットが物を作り、物流では自動運転や倉庫ロボットが荷物を運び、AIが在庫や需要を管理する。
そうなれば、社会全体の生産力はかなり上がるかもしれません。
でも、その生み出された富は誰のものになるのでしょうか。
ここを考えないと、働かなくてもいい未来は実現しません。
ロボットが働いて多くの利益を生み出したとしても、そのロボットを所有している企業や一部の人だけが豊かになるのであれば、多くの人は生活のために働き続けることになります。
つまり、技術が進んでも、その恩恵が社会全体に分配されなければ、人間が働かなくてもいい社会にはならないんです。
ここがとても重要なんですね。
AIやロボットが仕事をしてくれる未来というと、まるで人類全体が楽になるように聞こえます。
でも実際には、誰がその技術を持っているのか、誰が利益を受け取るのかによって、未来の形は大きく変わります。
もし一部の企業だけがAIとロボットを所有し、そこから生まれる富を独占するなら、格差はさらに広がるかもしれません。
一方で、その富を社会全体でうまく分配できる仕組みが作られれば、働かなくても最低限の生活ができる人は増えるかもしれません。
たとえば、ベーシックインカムのような制度が議論されることもありますよね。
社会全体の生産力が上がったぶんを、人々に分配するという考え方です。
もちろん、それが本当にうまく機能するかは分かりません。
制度をどう作るのか。
誰が負担するのか。
どの程度まで支給するのか。
働く人と働かない人のバランスをどう取るのか。
少なくとも、働かなくてもいい社会は、技術だけでは完成しないということです。
そして仮に、この分配の問題がうまく解決されたとしても、まだ別の問題が残ると思うんです。
それこそが、人間に突きつけられる問いなのです。
人間が向き合うべき問い
AIやロボットが社会を動かし、富の分配もうまくいったとします。
地球上の多くの人が、住む場所に困らず、食べるものにも困らず、一般的な医療や娯楽も受けられる。
生きるために働かなくても、そこそこの生活ができる。
そう聞くと、とても理想的に感じますよね。
でも、その生活で全員が満足するのかというと、私は少し怪しいと思うんです。
なぜなら、人間には欲があるからです。
最初は、そこそこの生活ができるだけで十分だと思うかもしれません。
でも、その状態に慣れてくると、今度はもっと良い暮らしがしたいと思うようになるのではないでしょうか。
もっと広い家に住みたい。
もっと自由に使えるお金がほしい。
もっと特別な体験がしたい。
もっと人から認められたい。
こういった気持ちは、簡単にはなくならないと思うんです。
人間は、ある程度満たされればそこで完全に満足するという生き物ではありません。
もちろん、すべての人が強い欲を持っているわけではないと思います。
「足るを知る」を実践して、今あるもので満足できる人もいますし、穏やかに暮らすことを幸せと感じる人もいると思います。
でも社会全体で見たとき、人間からもっと欲しいという気持ちが完全になくなるとは考えにくいんです。
ここが、働かなくてもいい社会の難しさだと思うんです。
もし全員が同じような生活をして、そこに満足できるなら、社会はとても安定するかもしれません。
でも人間には、他人と比べる心があります。
自分だけのものを持ちたいという気持ちがあります。
もっと上に行きたいという衝動があります。
そういった欲がある限り、働かなくてもいい社会になったとしても、別の形で競争は生まれるかもしれません。
お金ではなく、影響力かもしれません。
仕事ではなく、創作や発信かもしれません。
生活のためではなく、承認のために人は動くのかもしれません。
つまり、人間は生きるために働かなくてもよくなったとしても、何かを求めて動き続ける可能性が高いんです。
そう考えると、働かなくてもいい未来というのは、人間が何もしなくなる未来ではないのかもしれません。
生きるための労働がなくなったあとに、人間の欲がどこへ向かうのかが問われる未来になると思うんです。
欲は悪くない
仏教では煩悩を捨てることの重要性を説いていますが、私は欲はそれほど悪いものではないと考えています。
それどころか、欲はあるべきものだと思っているくらいです。
たしかに、欲は人を苦しめることがあります。
もっと欲しいと思うから満足できなくなる。
人と比べるから劣等感が生まれる。
奪い合うから争いが起きる。
そういう面があるのは間違いありません。
でも一方で、欲があったからこそ、人類はここまで発展してきたとも言えるんです。
もっと便利に、もっと遠くへ、もっと速く、もっと知りたい、もっと生きたい。
こういった欲がなければ、科学技術も、経済も、文化も、ここまで発展していなかったかもしれません。
人間は、今あるもので満足しきれなかったからこそ、工夫をしてきました。
不便を減らしたいと思ったから道具を作り、遠くへ行きたいと思ったから乗り物を作り、病気を治したいと思ったから医学を発展させてきたんだと思います。
つまり、欲は問題の原因であると同時に、発展の原動力でもあるんです。
ここがとても難しいところなんですね。
働かなくてもいい社会を安定させるためには、人間の欲をある程度抑える必要があると言えるのです。
みんながそこそこの生活で満足する。
必要以上に奪い合わない。
他人より上に行こうとしすぎない。
今あるものに感謝して穏やかに暮らす。
それができれば、たしかに社会は落ち着くかもしれません。
でも、欲を抑えすぎたとき、人間は発展を止めてしまう可能性もあります。
そうなると、社会は安定する代わりに、停滞してしまうかもしれません。
もちろん、停滞が必ず悪いというわけではありません。
無限に成長し続けることが正しいとも言い切れません。
ただ、人間という存在を考えたとき、欲を完全に手放した社会が本当に人間らしいのかという疑問は残ります。
人はただ楽をしたいだけの存在ではないと思うんです。
誰かに認められたい。
自分の力を試したい。
まだ見ぬものを見てみたい。
今より少し良くしたい。
そういった欲があるからこそ、人は苦しみながらも前へ進んできたのだと思うのです。
AIやロボットが社会を動かす未来は、技術的にはかなり現実味を帯びてきています。
ただ、それがそのまま人間の幸せにつながるかは分かりません。
働かなくても生きられる社会を作るには、富の分配が必要です。
そして分配が実現したとしても、人間の欲がなくなるわけではありません。
もっと欲しい。
もっと認められたい。
もっと良くしたい。
そうした欲があるからこそ、人類は発展してきました。
働かなくてもいい社会は、便利で豊かな未来かもしれません。
でも、何かを生み出したい、誰かに必要とされたいという気持ちまでなくなるとは思えないんです。
働かなくてもいい未来は、便利で豊かな未来である一方で、人間の本質とズレる可能性もあると思うんです。
AIがどこまで社会を動かすようになっても、人間が何を求めて生きるのかという問いは残り続けるのではないでしょうか。
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